公益財団法人こころのバリアフリー研究会はこの度2025年7月投開票の参議院選挙に向け、「精神障害のある人の権利擁護に関する各政党の政策・考え方についての公開質問状」を、各政党宛に郵送にて送付いたしました。

この記事では、各政党からの回答をもとに、以下の6つの重要課題に対する各政党の見解をご紹介いたします。


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目次

1. 精神科医療機関における身体的拘束

2. 非自発入院(特に家族の同意に基づく医療保護入院)

3. 長期入院

4. 精神科病院における虐待

5. 精神障害に関する根深い偏見や差別の問題

6. 病床削減で浮く財源の、地域医療充実への紐付け転用

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1. 精神科医療機関における身体的拘束

現況について

精神科医療機関における身体的拘束は、精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める告示により、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たす場合に例外的に実施されるものとされています。

一方で、身体的拘束により死亡事故も発生しています。たとえば、2017年にニュージーランド人のケリー・サベジさんが神奈川県内の精神科病院で両手足首と腰をベッドに約240時間拘束された後心肺停止状態になり、緊急搬送先の病院で亡くなった事故が起き、国際的な議論になりました。

精神科病院における身体的拘束は、2017年以降、わずかな減少を示していますが、高止まりの状況が続いています。2022年においては10,903人もの患者が身体的拘束をされています。障害者権利条約の総括所見(2022)においては、パラグラフ33において精神科病院における障害者の隔離、身体的拘束、強制的な治療への懸念が示されています。

 引用:山之内 芳雄ほか. 精神病床での身体的拘束の法的・調査における視点の整理. 精神神経学雑誌 = Psychiatria et neurologia Japonica. 122(12):2020,p.930-937.

引用:山之内 芳雄ほか. 精神病床での身体的拘束の法的・調査における視点の整理. 精神神経学雑誌 = Psychiatria et neurologia Japonica. 122(12):2020,p.930-937.

研究会が考える問題点

身体的拘束は、死亡事故に至らないまでも精神障害のある人に人としての尊厳を奪われたと感じさせるほどの大きな精神的苦痛を与えることやそのトラウマ体験のために精神科医療に不信を抱き、その後の治療を忌避して症状悪化を繰り返す人も少なくありません。 また、日本では、他の国と比べて桁違いに多くの身体的拘束が施行されていることから、見直しの機運が高まっており、身体拘束最小化委員会の設置など漸進的な取り組みは行われているところですが、大きな改善には至っていません。

▲身体的拘束の例(病棟内研修時に行われたもので被写体は医療従事者スタッフ)

▲身体的拘束の例(病棟内研修時に行われたもので被写体は医療従事者スタッフ)

考え得る施策案

このような課題を改善するためには、いくつかの具体的な施策の推進が期待されます。

  1. 精神科医療機関における身体的拘束を定める精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める告示について、第210回臨時国会で成立した障害者関連法案の附帯決議18に基づいて、一時性、切迫性、非代替性の要件を明確化すること。
  2. 身体的拘束なしに精神科の入院治療を行うための、精神科病院に求める医療従事者の配置基準などの抜本的な見直しを行うこと
  3. 身体科の重症の患者を治療するIntensive Care Unitと同じように、スタッフの人員配置体制を強化するように診療報酬改定を行うこと。
  4. 身体的拘束を例外的実施として定めたうえで、拘束を施行する場合は、精神的屈辱感への聞き取り、肺塞栓症・関節の拘縮・胸部や腹部の圧迫予防のための検査やケア等の体制整備および実施の義務化を定めること。